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2018年11月5日

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【相続コラム 2018.11】司法書士藤井真司事務所 発行

タイトル

こんにちは、司法書士の藤井です。暑かった夏が嘘のようにちゃんと秋も深まり日ごとに気温も下がっています。暑かった夏の分寒い冬が訪れる予感です。秋は短く感じることになると思いますが、今は寒暖差が大きいので体調にはくれぐれも気をつけてお過ごしください。
年の瀬に向けて、少しずつ忙しくなりそうですが、それに忙殺されることなく今年一年をちょっとだけ振り返って自分の死後のことを考えてみるのもいいのではないでしょうか。まだまだ若いからとか考えずに、今の自分の状況から死後のことを考えてみる時間を持つと、慌ただしい中に落ち着く時間が生まれることでしょう。

見出し

今回のご相談者は、山下和博さん(52歳・仮名)です。山下さんのお父さん義男さん(78歳・仮名)はご自身で会社を興しそれが成功して今の財産を築いたとのこと。この財産は妻の幸子さん(75歳・仮名)と一緒に築き上げたとして、ご自身が亡くなった後は妻に遺したいと考えていました。そこで、2年前に「全財産を幸子さんに相続させる」として遺言書を作成して、日々を穏やかにご夫婦で生活していたのです。義男さんは持病を持っていることもあり、とても健康な奥さんより先に亡くなると考えていたのですが、信じられないことに奥さんの幸子さんに不幸が先に訪れました。奥様の幸子さんは一か月前に亡くなったのです。和博さんは義男さんが作成した遺言書について、受け取る母がいなくなったが父が亡くなった後の遺産はどうなるのだろうと思い、私に相談されたのでした。
和博さんは一人息子でもあり、父義男さんの現在の遺言書で相続する権利は、自分に来るものだと考えていたとのことでした。私は、遺言書が無くても一人息子の和博さんに遺産は引き継がれるので問題ないはずだが、お父さんが遺言書を作成した理由があるはずだと考え、お父さんの義男さんと話をさせてもらうようにしました。
後日、事務所に来てもらった義男さんに、2年前の遺言書作成しの事情を尋ねたところ、「実は私が若いころに認知した子供が1人いるのです。私の会社を盛り立ててくれる妻や子供に迷惑をかけたくないので遺言書を作成しました」とのこと。そこで、義男さんに現在の遺言書は奥様が亡くなったことで、遺産の受取人がいない状態になって無効になっていることを説明すると、「えっ、妻の唯一の子供の和博に行かないのですか」と言われたので、法律上は遺言書の受け取る権利は相続されないと説明しました。義男さんはどうすればいいかわからず、途方に暮れた様子でしたので、私の方から「遺言書を作り直したら如何ですか」と提案しました。すぐに、公証役場に行く手筈を整えて、義男さんと一緒に遺言書の再度の作成をしたのです。次の遺言書には「前に作成した遺言書は全て撤回して、全財産を長男和博に相続させる」として・・・それから、3か月後、義男さんは亡くなりました。あのままであれば、会社を含めて遺産相続が大変なことになっていたのは確実です。和博さんより依頼を受けて作り直した遺言書で義男さんの遺産はすべて和博さんが引き継ぐ手続きをしました。
遺言書は一度作成したら、それで終わりではなく、状況が変わったり気持ちに変化があればいつでも作り直せます。それと受取人の死亡は、その部分については無効になってしまいますので気をつけましょう。

ここでちょっと豆知識