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2018年12月10日
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【相続コラム 2018.12】司法書士藤井真司事務所 発行
こんにちは。司法書士の藤井です。今年最後の月ですが、相変わらず異常気象が続いているようで、12月に夏日の25℃という観測史上一番高い気温を記録したそうです。暑くなったり寒くなったりを極端に繰り返しているようなので体調管理が特に難しいと思います。お体をご自愛しながら、忙しい師走を乗り越えてください。
さて、年末には、自分自身の棚卸をかねて、「もしも」自分に何かあった時の残された家族について考えてみるのもいいかもしれません。日々に忙殺される中に、ふと足を止めて、自分のいなくなった後のことをちょっとだけでも考えてみませんか。
今回の事例は、私がお世話になっている会計士さんの相談です。その会計士さんのお客様(鈴木良子さん(仮名・75歳)といいます)が「自筆証書遺言を書こうとしていた矢先に容態が悪くなり、遺言を急ぎたいのだが、良い案はないでしょうか?」と相談です。詳しく聞くと、ホスピス入院中で遺言を検討していたとのことですが、ここ数日で様態が悪くなり、意識ははっきりしているものの手の力がなくなり自署できなくなっているとのことでした。鈴木さんは身寄りのない女性で、遺産は面倒をよく見てくれた知人に残したいと考えて、遺言書の内容を検討して、あと一歩で完成するところだったとのことです。私は、時間が無いとのことなので危急時遺言の説明をして、その会計士さんより「今日の午後予定は空いてませんか?」と鈴木さんが入院中のホスピスに行って自分と一緒に証人となって欲しいとの要請があり、他の要件を後回しにして急遽訪問することしました。
私たちはホスピスに着くとすぐに病室まで案内され、鈴木さんの意思確認の立会となりました。鈴木さんはかなりきつそうなのですが、なんとか遺言をやり遂げようと痛み止めで眠くなりそうな自分を必死に立て直そうと頑張っていらっしゃる様子がとても痛々しかったです。
危急時遺言の要件は、以下の通りです。①証人3名立会のもとで、遺言者が証人に遺言の趣旨を伝え、②遺言者の趣旨の内容を筆記し、③筆記した内容を遺言者及び証人3人に読み聞かせる等で内容に誤りがないかを確認し、④末尾にその証人3名が署名、押印する。これで、遺言書はできるのですが、その後20日以内に家庭裁判所に審判の申し立てをすることが更なる要件となります。ご本人の死期が近いときに用いられる手法で、遺言案件としてはあまり用いられることがなく私も作成に携わったのは初めてでした。
この遺言書を作成した翌日、鈴木さんが亡くなったとの連絡を頂いたのにはかなり驚きました。もし、会計士さんが私に連絡をしてこなかったら、そして私が当日訪問できなかったら、遺言は作成されず、鈴木さんの遺志は実現されずに法律の手続きに則って処理されることになります。本当に危急時だったわけで、そう思うと今更ながらドキドキしてしまいます。
私たちはご本人の遺志実現のために出来るだけの努力はいたしますが、出来ればギリギリのタイミングではなく、じっくりと余裕を持って作成して頂ければ更に良い遺言が作成される事を知って頂きたいと思っております。
今回の鈴木さんのご冥福をお祈り致します。
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